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眼鏡旅情

袋井市(静岡県)

大舞台には立てない性格を自覚し、突出することを避け、かといって下にもいたくない。こんな平均的な人間であるため、真ん中という言葉には同士との思いを強くする。世界の中心...、ベストセラー小説であり、今から10年前に映画化され、こちらも大ヒットとなった。中心といえば真ん中にも通じ、まったく関係ないものの何故かうれしくなる。
今回の旅の目的は、真ん中。定義によって様々な真ん中があるが、静岡県袋井市も正真正銘のど真ん中。東海道五十三次で江戸からも京からも数えても27番目。袋井宿であり、プラベ流街道の歩き方が今号でも続く。

木曽町(長野県)

前回の中山道の宿場町巡りで、その世界にはまってしまった旅人は、比較することさえ許されないが、プラベ流街道をゆくとさせていただく。もう少し足を伸ばせば木曽の宿場町に行けたのに、地域限定のテーマがそれを阻んでしまった。
一度に複数の地域を回れば当然、効率的なのだが、やはり旅は自宅を出発してから、いや旅に出る前の準備段階から旅が始まると考えているので、ここはポジティブに捉えていくのが賢明だ。
梅雨本番の時期に訪れただけに雨は気になる。しかも旅立ちの週を迎えて早々、南木曾地区で土砂崩れが発生、甚大な被害を受けてしまった。同じ木曽郡であることから取材中止を視野に入れていたが、目的地である木曽町はまったく問題がないようで、南木曽町の一日も早い復旧を願い、予定どおりのスケジュールで旅に出掛けることになった。

中津川(岐阜県)

恵みの雨には違いないが、旅ともなれば一年を通じてもっとも避けたいのが梅雨の時期。もっとも自他共に認める雨男が嘆くことではない。雨があってこその紫陽花は美しさを際立たせるだけに、ここはポジティブシンキングに徹するだけ。まして梅雨の晴れ間は、いつもの晴天よりも有り難みを感じさせてもくれる。
その淡い期待を抱き向かった先は岐阜県中津川市。岐阜といえば飛騨高山、長良川の鵜飼い、郡上八幡に下呂温泉。いずれも全国に知られた名所であるが故に、中津川の存在を目立たなくさせているのかもしれない。だが、ここ中津川は中仙道の宿場町としての風情を残し、幕末の歴史でも光りがあたる地であったのだ。しかもNHKの朝の連続テレビ小説にまつわる貴重な遺産を見ることができ、また2027年には、リニア中央新幹線の中間駅が、中津川に開業される予定であり、注目度は抜群。鉄道ネタになってしまうが、大都市を除き東海道新幹線とリニアの駅をもつのは、岐阜県だけ。何とも羨ましい。

青梅(東京都)

山無し県に居を構える人間にとって、山そのものの景色を眺めるだけで癒やされてしまう。前号の小鹿野でその思いを強くし、熱も冷めやらず出掛けた先は、青梅だ。御岳山、そして多摩川と一粒で二度美味しいとはこのこと。「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」の季節にこそふさわしい地でもある。
青梅は圏央道の開通に伴い、車でのアクセスはすこぶる良い。関越道、中央高速を経由しても、青梅に入ることができる。こうした道路整備がなければ、きっと青梅を訪れることはなかったと思う。この時ばかりは、思わず道路族を応援したくなってしまう。
登山、トレッキングを嗜まないだけに、青梅への印象は薄い。青梅マラソンは単にその存在を知っているだけだが、その歴史はもうすぐ半世紀であり、日本最大のマラソン大会だとか。距離は30㎞だが、山間を走るだけに、きっと体力消耗度はフルマラソンと肩を並べることだろう。
胸を張るほどの貧脚自慢には、まったく関係はない。いま山ガールが大挙して押し寄せてくるらしいが、興味というか自分の身体が拒否反応をし示してしまう。それでも頂からの眺望は楽しみたい、こんなわがままな旅人にもやさしい山が、御岳山なのだ。

小鹿野町(埼玉県)

編集部と親交のある、とあるメーカーの営業マンが表敬訪問してくれた。当コーナーの編集作業をしていたところで、運悪くというかパソコン画面を覗かれてしまった。「次号は小鹿野なんですね」と語り掛けてくる。ほんの一枚の風景写真を見ただけで、旅した地を言い当てるとは、一体何者?
この方は埼玉出身で、本人曰く埼玉県人なら誰でも知っていると胸を張る。山に囲まれたところで、トレッキングに絶好な場所であるとレクチャーしてくれた。正直、今回の旅を通じて小鹿野を知ったわけだが、秩父市という一括りにしか考えていなかった。
ただ、頭の中にかすかに残っていたのは、先の大雪で孤立集落が発生した地であったことと、わらじカツ丼が有名(この時点では秩父と思っていた)だったことぐらいだ。もっとも旅人は千葉県人であるので、どうかお許しいただきたい。
秩父地区は以前、家族で長瀞に出かけたことがある。また秩父市内にも取材で訪れたことがあるのに、小鹿野町に目が行かなかった。すでにこの連載も100回をゆうに超えている。これは恥とばかりに、秩父・小鹿野を目指すことにする。

浜松(静岡県)

格は草食動物でありながら、食ともなれば極めて肉食であり、また雑食でもある。ことにB級グルメには目がなく、アルコールとともに供せばこの世は天国。そんな本能だけで生きている身であるから、宇都宮が餃子の消費量一位を奪還した報せに敏感に反応してしまう。すでに今回の旅の目的地がわかってしまうが、安易に宇都宮を選ぶわけはなく、これまで年間消費量で2年間1位だった浜松だ。
旅の楽しみ方として、食は大きなウェイトを占める。異論を唱える余地はないだろう。だが餃子やウナギといった食は二の次で、今回ばかりはしっかりとした目的を持っての旅となる。浜松はその全国に名を馳せる食、そして浜名湖があまりにも有名だけに、知る人は多いと思われるがものづくりの町であることが、いささか陰に隠れているような気がする。
そこでものづくりの現場の一端に触れることが主テーマとすれば、格好良く聞こえてしまうが、日本のオートバイ製造発祥の地とされ、初めてバイクを購入したメーカーもここにあることから、プチモーターショーを楽しもうと、毎回のことながらの独断と偏見に満ちた旅である。

仲多度郡(香川県)

数少ないカラオケレパートリーの中に、新沼謙治の「津軽恋女」があるが、この時ばかりは二度と唄うものかと思ってしまう。曲に何ら責任はなく、ただの八つ当たり。翌日に香川・四国の旅を控えていたからだ。珍しく飛行機で向かうことにしたのがいけなかったのか、それとも、LCCでの利用がいけなかったのか、今日ほど雪を恨めしく思ったことはない。
それでもほのかな期待を胸に、早朝のフライトに合わせて目覚ましをセットした。朝、自宅の玄関ドアを開くと、そこはまさに雪国。30cm以上積もっているが、こちらは冬タイヤを装着。自宅前はまさにパウダー状態だが、成田空港に向かう幹線道路はすでに氷の轍ができあがり、チェーン装着車でも腰振りダンスを演じる始末。融通が利かないLCCだけにとりあえず空港を目指すも、坂道で大渋滞にはまってしまった。
車内でフライト情報を確認すると欠航となっていただけに、当然ながら陸路に変更して香川へ向かうわけだが、2時間以上経っても車の列は動くことなく、Uターンすら許されない。ようやく動き出したのは、午前4時に出発してから約4時間が経過していたのだった。

上田(長野県)

今年はソチ冬季オリンピックが開催され、昨年は2020年東京五輪開催が決定し、五輪一色に染まる今日この頃。それなら五輪つながりで、目指すは98年に冬季五輪が開催された長野県となる。その会場となった志賀高原は、あちこち出没してきたわけではないが、生意気ながら自己評価で雪質ナンバー1。特に横手山はスキーオンリーで、音楽も流れない昭和を感じさせるゲレンデが特に気に入っていた。しかもゲレ食もバッチリ、餃子にモツ煮...、と考えるだけで行きたくなってしまう。
もちろんスキー旅のわけもなく、それでも雪山に後ろ髪引かれる思いで、菅平高原を擁する、上田市に向かうことにした。この旅で何度か長野を訪れたが、或方から、善光寺だけでは片参り、上田市の北向観音をお参りしなさい、との言葉も後押ししてくれた。

東大阪(大阪府)

日本各地に、ものづくりの町と呼ばれるところはいくつもある。ここは思い切って東西を代表するエリアをあげれば、東の大田区、西の東大阪としたい。いずれも小さな町工場が、とても想像できない先端技術を支え、世界、そして宇宙へと旅立つ。
その職人の技を伝えるのが本筋なのだが、歴史の面白さが幹より枝にあるように、視点を変えてみることで、その町の良さを発見できる。これは旅の楽しさそのものでもある。以前、この企画で大田区の限られたエリアを旅するたけで、意外な一面に触れることができた。それならば西の横綱、東大阪を旅しないわけにはいかない。果たしてどんな出会いが待っているのか、実に楽しみである。

安城(愛知県)

2020年は56年ぶりに東京りオリンピックが開かれる。昭和39年に開催された前回の東京オリンピックはまさに、高度成長期の象徴でもある。しかし忘れてはならないのが、同じ年に開通された東海道新幹線だ。そして、どうでもいいことだが旅人が生を受けた年でもある。
記憶にはないが、当時のアルバムを見ると、幼稚園に入る前、家族で熱海まで家族旅行に出かけ、新幹線車内で撮った写真が収められている。それから40年以上が過ぎ、夢の超特急は西へ向かうビジネス列車としての利用が多くなった。こだまはさておき、ひかりの本数はグッと減り、新幹線の主役はのぞみへと変わっている。
停車駅が少ないということは、眠りを妨げずくつろぎの時間を得ることができる。のぞみが停車することはないが、この駅名は新幹線をよく利用される方なら誰もが記憶されているはず。そう三河安城駅だ。名古屋に着く前に必ず、予定通りの運行を告げる車内アナウンスが耳に届けられる。ある意味メジャーな三河安城駅に興味をそそられ、安城市への旅へと出かける。

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