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眼鏡旅情

浜松(静岡県)

格は草食動物でありながら、食ともなれば極めて肉食であり、また雑食でもある。ことにB級グルメには目がなく、アルコールとともに供せばこの世は天国。そんな本能だけで生きている身であるから、宇都宮が餃子の消費量一位を奪還した報せに敏感に反応してしまう。すでに今回の旅の目的地がわかってしまうが、安易に宇都宮を選ぶわけはなく、これまで年間消費量で2年間1位だった浜松だ。
旅の楽しみ方として、食は大きなウェイトを占める。異論を唱える余地はないだろう。だが餃子やウナギといった食は二の次で、今回ばかりはしっかりとした目的を持っての旅となる。浜松はその全国に名を馳せる食、そして浜名湖があまりにも有名だけに、知る人は多いと思われるがものづくりの町であることが、いささか陰に隠れているような気がする。
そこでものづくりの現場の一端に触れることが主テーマとすれば、格好良く聞こえてしまうが、日本のオートバイ製造発祥の地とされ、初めてバイクを購入したメーカーもここにあることから、プチモーターショーを楽しもうと、毎回のことながらの独断と偏見に満ちた旅である。

仲多度郡(香川県)

数少ないカラオケレパートリーの中に、新沼謙治の「津軽恋女」があるが、この時ばかりは二度と唄うものかと思ってしまう。曲に何ら責任はなく、ただの八つ当たり。翌日に香川・四国の旅を控えていたからだ。珍しく飛行機で向かうことにしたのがいけなかったのか、それとも、LCCでの利用がいけなかったのか、今日ほど雪を恨めしく思ったことはない。
それでもほのかな期待を胸に、早朝のフライトに合わせて目覚ましをセットした。朝、自宅の玄関ドアを開くと、そこはまさに雪国。30cm以上積もっているが、こちらは冬タイヤを装着。自宅前はまさにパウダー状態だが、成田空港に向かう幹線道路はすでに氷の轍ができあがり、チェーン装着車でも腰振りダンスを演じる始末。融通が利かないLCCだけにとりあえず空港を目指すも、坂道で大渋滞にはまってしまった。
車内でフライト情報を確認すると欠航となっていただけに、当然ながら陸路に変更して香川へ向かうわけだが、2時間以上経っても車の列は動くことなく、Uターンすら許されない。ようやく動き出したのは、午前4時に出発してから約4時間が経過していたのだった。

上田(長野県)

今年はソチ冬季オリンピックが開催され、昨年は2020年東京五輪開催が決定し、五輪一色に染まる今日この頃。それなら五輪つながりで、目指すは98年に冬季五輪が開催された長野県となる。その会場となった志賀高原は、あちこち出没してきたわけではないが、生意気ながら自己評価で雪質ナンバー1。特に横手山はスキーオンリーで、音楽も流れない昭和を感じさせるゲレンデが特に気に入っていた。しかもゲレ食もバッチリ、餃子にモツ煮...、と考えるだけで行きたくなってしまう。
もちろんスキー旅のわけもなく、それでも雪山に後ろ髪引かれる思いで、菅平高原を擁する、上田市に向かうことにした。この旅で何度か長野を訪れたが、或方から、善光寺だけでは片参り、上田市の北向観音をお参りしなさい、との言葉も後押ししてくれた。

東大阪(大阪府)

日本各地に、ものづくりの町と呼ばれるところはいくつもある。ここは思い切って東西を代表するエリアをあげれば、東の大田区、西の東大阪としたい。いずれも小さな町工場が、とても想像できない先端技術を支え、世界、そして宇宙へと旅立つ。
その職人の技を伝えるのが本筋なのだが、歴史の面白さが幹より枝にあるように、視点を変えてみることで、その町の良さを発見できる。これは旅の楽しさそのものでもある。以前、この企画で大田区の限られたエリアを旅するたけで、意外な一面に触れることができた。それならば西の横綱、東大阪を旅しないわけにはいかない。果たしてどんな出会いが待っているのか、実に楽しみである。

安城(愛知県)

2020年は56年ぶりに東京りオリンピックが開かれる。昭和39年に開催された前回の東京オリンピックはまさに、高度成長期の象徴でもある。しかし忘れてはならないのが、同じ年に開通された東海道新幹線だ。そして、どうでもいいことだが旅人が生を受けた年でもある。
記憶にはないが、当時のアルバムを見ると、幼稚園に入る前、家族で熱海まで家族旅行に出かけ、新幹線車内で撮った写真が収められている。それから40年以上が過ぎ、夢の超特急は西へ向かうビジネス列車としての利用が多くなった。こだまはさておき、ひかりの本数はグッと減り、新幹線の主役はのぞみへと変わっている。
停車駅が少ないということは、眠りを妨げずくつろぎの時間を得ることができる。のぞみが停車することはないが、この駅名は新幹線をよく利用される方なら誰もが記憶されているはず。そう三河安城駅だ。名古屋に着く前に必ず、予定通りの運行を告げる車内アナウンスが耳に届けられる。ある意味メジャーな三河安城駅に興味をそそられ、安城市への旅へと出かける。

松崎(静岡県)

伊豆を訪れるのは何時以来だろうか。就職して間もない頃、同じ業界に身を置く年の近い仲間3人と海水浴に出かけたのが最後だから、かれこれ30年前のことだ。
旅人にとって伊豆は思い出深い地であり、それこそ青春の1ページを飾ってくれた。高校2年生の時、野郎4人で海水浴旅行。翌年は遅生まれの同級生が早々に免許を取得し、メンバーが代わったものの、今度も4人で箱スカに乗車して海水浴に出かけた。宿の予約もせずの3泊4日の旅で、海ではいつの間にか沖へと流され溺れそうになった苦い思い出も、いまでは懐かしい。
これまでは、海水浴がメインであった。子供たちも独り立ちするまでに時間が過ぎた。それは旅人にとって海水浴の卒業を意味するものなのかもしれない。やや寂しい気もするが、伊豆はマリンレジャーだけでは終わらない。ペリー上陸の地が下田であり、伊豆を舞台にした小説も数知れず。夏が終わったからこそ、伊豆の歴史と文化に触れてみたくなった。

六郷エリア(大田区)

意図したわけではないが、水の流れに誘われるように、多摩川を渡り東京に入った。そこは大田区。この地をイメージするものといえば、高級住宅地の東の横綱といえる田園調布をすぐに思い浮かべることだろう。何しろ星セント・ルイスの「田園調布に家が建つ」というギャグが一世風靡して事でも知られている、と言ってしまえば、やはり昭和の人間であること改めて実感する。いずれにしても庶民にとっては高嶺の花であることはな間違い。
果たして、もっとも高級住宅地に似合わない旅人が、ここを旅することができるのかと心配になり、東京23区の地図を俯瞰すれば、意外な事実を発見。実に面積が広く、調べてみれば60・42㎢と区内で一番広いことを知る。しかも東京湾に面している。東京国際空港も大田区であり、近視眼的な捉え方を反省するばかりで、今回の旅を通じ、その広さと比例するように懐の広い地であることを体感することになった。

四街道(千葉県)

もう四半世紀が過ぎてしまったが、旅人が編集部に入る前、業界の勉強のため、卸商社で修行させていただいた。内向的な性格は自身が一番知っているにもかかわらず、営業職を仰せつかってしまう。半人前以下でありながら大事な顧客(販売店)を担当させてくれたことに、その修業先の気持ちに改めて感謝しているところだ。
その一つのエリアが四街道だった。この時は、仕事オンリーで観光などとは一度も考えたこともない。観光ではないが、もっと商圏リサーチを徹底していれば、顧客、修業先に貢献できたと後悔するばかりだ。
唯一、この町で感じていたことは、都心のベッドタウンということ。この地域性だけに限られてしまうと、旅情気分を味わうことは難しくなるが、やはりどんな場所にも歴史あり。振れ幅が大きければ、それだけ楽しみも大きくなることを、ここ四街道でも実感する。

武蔵小杉(川崎市中原区)

今年は日本国民にとって明るい話題が届けられた。ご存じ、富士山が世界文化遺産に登録されたこと。山体だけでなく周囲にある神社、登山道、湖沼などで構成されているが、世界遺産取材ではないのでこの辺にしておこう。
なぜ富士山の話題を紹介したかとえいば、日本一。やはり、二番、三番と違って、ナンバーワンの響きはグッとくる。そこで日本一を探しをキーワードに旅に出ることにするが、意外な一番が武蔵小杉にあることを知る。何が日本一かといえば、階数日本一のタワーマンション(2010年10月時点)、パークシティ武蔵小杉・ミッドスカイタワーがそれ。
なんと地上59階建てという恐るべし高さ。その高さは大阪の北浜タワーに次ぐ、203・5メートル。編集部もマンションの最上階にあるものの、その階数といえばわずか9階と足下にも及ばない。だが下一桁の数字と同じだけに親近感を覚えてしまう。ご迷惑を承知の上で、歳の離れた兄貴と慕い、運命の悪戯で離ればなれになった兄弟が再会、という妄想を抱きながら、武蔵小杉へと旅立った。

島田

天高く聳える高層ビル、マンションもいいけれど、やはり歴史ある町は趣が違う。宿場町をイメージさせるものとして有名なのが、水戸黄門であり、またシンボル的存在といえば、十返舎一九作の東海道中膝栗毛。この余りにも有名な滑稽本を知ることになったのは、テレビアニメ、いなかっぺ大将。主人公の風大左衛門が東海道へと武者修行に出たからだった。旅人にとっては東海道中膝栗毛は思い出深い。もちろん大左衛門のように、歩いて旅したわけではないが、小学校4年生の時に、学芸会の出し物で喜多さん役を演じたことがあったから。大舞台に立てない身であることを自認するだけに、いま考えると自分で信じられない行動だっが、それは子供だけに怖いもの知らずだったのだろう。本物の東海道の宿場町、島田を訪れ、脚本も自作し、毎日のように友達の家を回り歩きながら練習していた日々を懐かしく思う。

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